「もったいない」と感じる心と市場経済の矛盾について考える

最終更新日: 2025/03/24


私たちは市場経済の中で生活しています。企業は市場において、需要と供給、そして競合他社との競争を通じて、製品を商品として提供し、私たちはそれを消費します。
しかし、そのような消費行動の先に、時として「もったいない」という感情を抱くことがあります。「まだ使えるのに」「食べられるのに」と感じる日本人は多いのではないでしょうか。
そして、企業側の立場に立った場合、利益を追求する「経済活動」と食品ロスや産業廃棄物処理などの課題との間に矛盾を感じるビジネスパーソンもいるかもしれません。

アイムライズは「もったいない事業」を通じて、食品を中心にさまざまな商品の廃棄を減らすべく、買取事業を行っています。しかし、事業を進める中で、私たち自身も矛盾を感じることがあります。
そこで、今回は「もったいない」という言葉の語源を紐解き、なぜ多くの日本人がこの精神を持ち、現代にも受け継がれているのかを考察します。その上で、市場経済における競争と「もったいない」という感情の間に存在する矛盾について、具体的に考えていきたいと思います。

日本人の心に根付く「もったいない精神」

「もったいない」という言葉は、単に物を大切にするという意味を超え、日本人の美徳や価値観を象徴する言葉として広く知られています。この言葉が日本で生まれ、多くの日本人の価値観に根付いた背景には、仏教と神道という二つの宗教・思想の融合、資源の限られた国土、自然との共生を重んじる価値観が深く関わっています。

仏教の教え

○ 「勿体(もったい)」という言葉は「物が本来持っている働きや価値を十分に生かせないこと」を意味し、「すべてのものには価値があり、無駄にしたり粗末にしたりしてはいけない」という教えがあります。
○ お釈迦様は、小さな虫けらにも命があり粗末にしてはいけないと説き、托鉢の作法では食べ物を残さずすべていただくことが重要とされています。

神道の思想

○ 自然や生命に対する畏敬の念が強く、すべてのものには神が宿っていると考えられています。そのため、自然の恵みを大切にし、無駄にしないことが重要とされています。
○ 古事記や日本書紀には、自然の神々や動植物を大切にするようにという記述が多く、神社の祭りでは収穫された作物などを神に捧げ、その恵みに感謝する儀式が行われます。

二つの宗教・思想の融合


○ 日本には古来より自然を崇拝する神道的な価値観があり、そこに仏教が伝来し、「すべてのものには価値がある」という思想が加わることで、「もったいない」という精神が生まれました。
○ 神道の自然崇拝や万物に神が宿るという考え方と、仏教のすべての命や物事を尊重する教えが結びつき、物や命を大切にする「もったいない」の精神が育まれました。

資源の制約

○ 日本は資源が限られた国であり、物を大切にしなければ生きていけないという現実的な側面も、「もったいない」の精神を育む要因となりました。

農耕民族と狩猟民族

○ 日本人は農耕民族と狩猟民族の両方のルーツを持っていると言われていますが、歴史的背景や生活様式から、現代の日本人には農耕民族の性質が多く育まれていると考えられます。
○ 「もったいない精神」は農耕民族の方が育まれやすく、その理由としては農業は種まきから収穫まで計画的な作業が必要で、この過程で、時間や労力を無駄にしない意識が生まれ、物が持つ価値を最大限に活かす「もったいない精神」につながると考えられます。
○ また、狩猟民族にも自然と共生を重視し、無駄な殺生を避ける文化をもつ人々もいます。

これらの要素が組み合わさり、「もったいない」という言葉は、物や命に対する深い敬意と感謝、そしてそれらを無駄にしないという思想が含まれており、自然との共生を重んじる日本人の価値観を形成する上で重要な役割を果たしました。「もったいない」という言葉は室町時代に起源を持つとされ、当初は仏教的な意味合いで使われていましたが、江戸時代以降には広く一般的に使われるようになり、現代のような意味合いを持つ言葉として定着しました。

身近なことで「もったいない」と感じたこと

複合機の買い替えで「もったいない」と感じてしまうタイミング

昨年、我が社の複合機のリース契約が6年で完了し、再リース契約となりました。再リースの契約だと、概ね更新前の1ヶ月分の費用で1年間利用できます。弊社のような中小企業はコピーする枚数も少なく、機器自体がそれほど劣化していません。しかし、リース契約が終了するタイミングで、リース会社や事務機器の販売代理店からは買い替えを促す営業電話が頻繁にかかってきます。
見た目もきれいで故障もほとんどなく、機能も十分な状態であることから、新しい機種に買い替える意味はほとんど感じません。その上新しい機種に買い替えればリース料金も上がるため、余計に「もったいない」と感じてしまいます。もちろん、リース切れの商品は、劣化具合に応じてリサイクル業者へ転売され、中古市場にて再販売されるため、リサイクル・リユースの観点ではこの仕組みは価値があります。


また、買い替えを促すタイミングとしては、メーカーの機種製造終了後の保守部品/消耗品の供給終了のタイミングがあります。各メーカーのルールによりますが、すでに購入した機種が製造終了となり、5年~7年間は保守用の部品が確保されているものの、その後は保守用部品のメーカー在庫がなくなり次第となり、メーカーによる保守ができなくなるとのことです。このタイミングで故障した際の保守に関するリスクが上がり、買い替えのタイミングがやってきます。もちろん、メーカー以外で部品等を調達し修理が可能な場合もありますが、不安は残ります。

なぜ、このような「もったいない」と思われる事が起こるのでしょうか。

それは市場経済の中でビジネスが行われ、わたしたちは、それほど意識しないで生活をしているからです。ビジネスのフェーズでそれぞれの利害関係者の立場で考えてみましょう。

● メーカーの立場

○ 売上を継続的に拡大させるため、新製品を開発、製造し買い替えを促します。
○ 耐久性を向上させ、保守コストを下げ保守料の利益率を確保します。
○ 保守部品の供給を終了することにより、故障時のリスクを高め買い替えにつなげます。
○ 機種ごとに部品の種類を増やします。

● リース会社の立場

○ 契約期間中、リース料金が売上となり、そこから機器の減価償却費を引いた差額が利益となります。
○ 契約期間終了後は再リース料が利益となりますが、金額はわずかです。
○ 契約終了前であれば、使用者に残債を精算する金額と新しい機器費用を合わせたリース費用を提案します。
○ 契約期間終了後は、減価償却が終わった機器を中古機器として転売することで、さらに利益を得ます。転売できれば、産業廃棄物の処理費用も負担せずに済みます。

● 販売代理店の立場

○ 販売数に応じて、仕入れ価格が安くなったり、インセンティブが多くもらえたり、キックバックがあったり、カウンター料金の保守費用が長期的な収益となったり、新しい契約に切り替えることにより増収が見込めます。

このように、それぞれの立場で利益を上げるために、機器の新規買い替えが促進されます。ビジネスマンは利益を追求することを考え、行動します。そして、それは市場経済の原理・原則です。しかし、そのことが直接的、間接的に「もったいない」を生み出すことにもつながるのです。

「もったいない」精神が現代と未来の社会に与える影響

現代社会は大量生産・大量消費を前提とした市場経済が主流であり、「もったいない」精神との間に深い矛盾を抱えています。この矛盾を紐解き、「もったいない」精神が現代と未来の社会に与える影響について、さらに深く考察していきましょう。

1. 現代社会における「もったいない」精神の意義と課題

現代社会において、「もったいない」精神は、資源の枯渇、環境汚染、気候変動といった地球規模の課題に対する解決策の一つとして注目されています。

● 資源の有効活用

○ 限りある資源を大切に使い、無駄を減らすことは、資源の持続可能な利用に不可欠です。
○ リサイクルやリユースを推進することで、廃棄物の削減と資源の循環利用を促進できます。

● 環境保護

○ ゴミの削減、エネルギーの節約、環境負荷の低い製品を選ぶことは、環境汚染の抑制と地球温暖化の防止に貢献します。
○ 地域の清掃活動や環境保全活動に参加することで、自然環境を守ることができます。

● 持続可能な社会の実現

○ 「もったいない」精神に基づくライフスタイルは、環境と経済のバランスを取り、持続可能な社会の実現に貢献します。
○ SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、「つくる責任 つかう責任」を果たすことが求められます。

しかし、現代社会においては、以下のような課題も存在します。

● 消費主義の蔓延

○ 広告やマーケティングによって、必要以上の消費が促される傾向があります。
○ 「新しいものが良い」という価値観が広まり、物を長く大切にする意識が薄れています。

● 大量生産・大量消費の仕組み

○ 企業は利益を追求するために、効率的な大量生産を行い、消費を促します。
○ 商品の寿命を意図的に短くする「計画的陳腐化」も問題視されています。

● グローバル化による影響

○ グローバルなサプライチェーンの中で、生産地と消費地が離れ、資源の無駄遣いや環境負荷が見えにくくなっています。
○ 各国の文化の違いから「もったいない」という概念の共有が難しい場合もあります。

2. 未来社会における「もったいない」精神の可能性

未来社会において、「もったいない」精神は、より重要な役割を果たすと考えられます。


● 循環型経済の実現

○ 廃棄物を最小限に抑え、資源を循環利用する循環型経済への移行が求められます。
○ 「もったいない」精神は、循環型経済の基盤となる価値観を提供します。

● テクノロジーとの融合

○ AIやIoTなどのテクノロジーを活用することで、資源の効率的な利用や廃棄物の削減が可能になります。
○ テクノロジーと「もったいない」精神を組み合わせることで、より持続可能な社会を実現できます。

● 価値観の変革

○ 物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさや持続可能なライフスタイルを重視する価値観が広まるでしょう。
○ 過度な消費を抑制し、必要な物やサービスを適切に選択する考え方が重要になります。

● グローバルな連携

○ 世界各国が「もったいない」精神を共有し、協力して地球規模の課題解決に取り組む必要があります。
○ それぞれの地域の文化に適した「もったいない」の概念を共有して行くことが大切です。

3. 「もったいない」精神を未来へ繋ぐために

「もったいない」精神を未来へ繋ぐためには、以下のような取り組みが必要です。

● 教育と啓発

○ 次世代に対して、「もったいない」精神の重要性を伝え、持続可能なライフスタイルを教育する必要があります。
○ 消費者に対して、環境負荷の低い製品やサービスの情報を提供し、賢い選択を促す必要があります。

● 政策と制度

○ 政府は、循環型経済を推進するための政策や制度を整備する必要があります。
○ 企業に対して、環境負荷の低い生産活動を促すインセンティブを与える必要があります。

● 企業の取り組み

○ 企業は、持続可能な製品の開発や製造、資源の有効活用、廃棄物の削減に取り組む必要があります。
○ CSR(企業の社会的責任)活動を強化し、社会全体の持続可能性に貢献する必要があります。

● 個人の意識改革

○ 私たちは、日々の生活の中で、「もったいない」精神を意識し、行動に移す必要があります。
○ 消費行動を見直し、必要なものだけを購入し、長く大切に使うことが大切です。

私たちは日々、市場経済の中で生活し、消費活動を行っています。その中で、「もったいない」と感じる瞬間は少なくないはずです。

● まだ使えるものを捨ててしまう時
● 食べられるのに捨てられてしまう食品を見た時
● 過剰な包装や使い捨ての製品を目にした時
これらの「もったいない」という感情は、どこから来るのでしょうか?そして、利益を追求する市場経済の仕組みの中で、この感情とどのように向き合っていけば良いのでしょうか?

● あなたにとって、「もったいない」とはどのような感情ですか?
● 日々の生活の中で、「もったいない」と感じる具体的な場面を意識したことはありますか?
● 市場経済の中で、「もったいない」を減らすために、私たち一人ひとりに何ができるでしょうか?


「もったいない」という言葉は、日本人の心に深く根付いた、物を大切にする精神を表す言葉です。しかし、現代の市場経済においては、利益追求の原理と「もったいない」精神との間に矛盾が生じているのも事実です。
この矛盾を抱えながらも、持続可能な社会を実現するためには、私たち一人ひとりが「もったいない」精神を再認識し、行動に移していく必要があります。
● 消費者として: 賢い選択をし、持続可能な消費を心がける。
● 企業として: 環境に配慮した製品やサービスを提供し、循環型経済に貢献する。
● 社会全体として: 「もったいない」精神を次世代に継承し、持続可能な社会の実現を目指す。
「もったいない」精神は、SDGsの目標達成にも貢献する、世界に誇るべき価値観です。この精神を大切にし、現代社会に活かしていくことで、私たちはより豊かで持続可能な未来を築くことができると信じています。