季節商品が過剰在庫になる要因を探り、対策と対処方法について紹介

最終更新日: 2025/04/25


日本の良さのひとつに「四季」があります。春・夏・秋・冬のそれぞれに色や温度などの特徴があり、それに合わせたイベントもたくさんあります。そのイベントは、昔からの風習やしきたりから伝わっているものから、商人が企てたものが広がったものなど様々です。
そしてイベントの盛り上げ役になるのが「季節商品」です。
お正月にはおせち料理、バレンタインデーにはチョコレート、お花見には花見弁当・・・
また、中身は通常品と同じで季節に合わせたパッケージを作るケースもあります。例えば桜の花びらがデザインされたペットボトルラベルや、母の日や父の日に向けて「ありがとう♡」などのコメント入りのパッケージなど。このような商品も、時期がすぎると、お客様が手に取る確率はかなり低くなります。それは「売れ残り感」が出てしまうからです。
そのため、このような季節商品は過剰在庫を発生しやすい商品で、年中頭を抱えている担当者も多いと思います。
そこで今回は、季節商品が過剰在庫になる要因を探り、対策と対処方法について紹介します。

需要予測の誤り

季節商品の需要変動の特性

外的要因への依存

季節商品は、気温、降水量などの天候、祝日や祭りなどのイベント、そして流行などの外的要因に大きく左右されます。これらの要因は予測が難しく、需要の急激な変動を引き起こす可能性があります。
例えば、今年は3月中旬に雪が降ったり極寒の冬に逆戻りしたため、既に春物商品でディスプレイしていた店内商品の売れ行きが悪かった店舗も多かったと思います。
また桜の開花予想が不安定になり、特に食品や飲料のメーカー様は売れ行きにハラハラされたと思います。

販売期間の短さ

季節商品は、販売期間が限られているため、予測の誤差が売れ残りに直結する可能性が高いです。
しかし最近では、少しでも販売期間を伸ばす傾向にあり、イベントが終わると直ぐに次のイベントに切り替えて販売する光景をよく見かけます。
例えば、ネットやリアル店舗に関係なくショップでは、ハロウィンが終わると数日のうちにクリスマスの装飾に早変わり。11月上旬なのに「え?もうクリスマス!」と思うこともよくあります。
少しでも早く盛り上げて、お客様にワクワクしてもらい、そのワクワクが売上に繋がると良いのですが、期間が伸びるのでその分仕入れも増える可能性があり、お客様と販売側の気持ちの温度差など、少しの予測ミスが大きな過剰在庫につながります。

流行の変化

流行の変化といえば「アパレル商品」というイメージですが、食品や飲料なども流行の変化を感じることがよくあります。

例えば、少し前によく耳にした「ロカボ」。糖質摂取をコントロールする流れがありました。そのため宴会の季節にビールが敬遠されることもあり、その流れから糖質オフのビールが人気となりました。しかしビール党の人から「こんなのはビールじゃない」などの声があがった時代もありましたが、メーカーは改善を重ね、今では美味しい糖質オフやゼロ系のビールがたくさんあります。

2. 需要予測の難しさ

過去のデータの限界

過去のデータは参考になりますが、未来の需要を完全に予測できるわけではありません。先ほどの、桜の開花予想はまさにコレです。

天候などの気候変動以外にも、ウイルスなどによるパンデミックや、戦争などの社会情勢にも左右されることがあるので、過去のデータが通用しないケースが増えています。

市場動向の複雑さ

例えば、バレンタインデーは日本の場合「女性が好きな男性にチョコレートをプレゼントして告白する」というイベントでしたが、その後「義理チョコ」→「友チョコ」→そして今は自分自身のための「ご褒美チョコ」も主流となっています。

消費者の嗜好や購買行動は多様化しており、市場動向を正確に把握することが困難です。

チョコレートのメーカーやパティシエは、新しい風潮に合わせた商品を考案していきますが、流れの変わり目に過剰在庫が発生する可能性が高くなります。

3. 過剰在庫による影響

予測モデルの限界

過去のデータ分析や統計モデルを用いても、予測が完全に当たることはありません。技術が進化しAIを用いた予測も発展してきていますが、すべての情報を網羅することは難しく予測の誤差はどうしても発生します。

特に、天候不順や景気変動など予測困難な外的要因や、自然災害や感染症などのパンデミック、また食品関連の事故などの突発的な出来事を考慮することは難しいです。

メーカーや企業は、年間を通してイベントを計画し推進していますが、直前でアクシデントが発生すると、計画は大きく崩れてしまいます。

販売計画と仕入計画の連携不足

1. 季節商品の需要変動の激しさ

販売部門は、予測困難な外的要因による需要変動をいち早く察知し、販売戦略を柔軟に変更する必要があります。しかし変更した販売戦略を仕入部門に速やかに共有できればよいのですが、なかなか上手くいきません。

そのため仕入部門は古い戦略に基づいて仕入れを継続し、結果として過剰在庫が発生してしまいます。

2.在庫調整の遅延

季節商品は販売期間が限られているので、販売期間中に在庫調整を行うことが重要ですが、部門間の連携が不足していると、適切なタイミングで在庫調整を行うことができません。結果として、売れ残った在庫を抱え込み、翌シーズンまで保管する必要が生じ、保管コストの増加や、商品の劣化につながります。
また衣類や雑貨のような翌シーズンまで保管できる商品は良いのですが、賞味期限がある食品や飲料などの売れ残ってしまった在庫は、廃棄処分になってしまいます。
数年前に報道された「恵方巻」問題は、食品ロスの大きな課題としてクローズアップされました。

記事:コンビニ恵方巻きは食品ロス問題の象徴だ

それでは、どうすれば季節商品の過剰在庫発生を防ぐことができるのでしょうか。

季節商品の過剰在庫防止策

1. 需要予測の精度向上

イベントに臨むにあたって、過去の販売データに加え、気象情報(気温、降水量など)、SNSを使ったトレンドの傾向、経済指標や変動、競合の同時期の動向など、多岐にわたるデータを収集・分析します。
特に、季節商品の売上に影響を与える気象情報は、詳細な地域ごとのデータや長期予報を活用します。季節によっては変動も激しいので、こまめにチェックしましょう。
またSNSのトレンド分析では、消費者の口コミや評判をリアルタイムで把握し、需要の変化を予測します。
多角的なデータ収集と分析を行い、イベント成功の確率を上げることにより、過剰在庫の防止に繋がります。
さらに予約販売を導入すると、販売数量の予測精度が上がります。

2.販売計画と仕入計画の連携強化

販売部門と仕入部門の部門間の認識のズレを防ぐためには、販売計画、在庫状況、販売実績などの情報共有が重要です。そのためには定期的な会議やミーティングを開催し、今後の展望や意見交換を行い、意識と情報のアップデートを行いましょう。
そして共通のKPI(重要業績評価指標)を設定し、部門間の目標を一致させます。

また需要変動や外的要因の変化に対応できるよう、柔軟な計画修正体制を構築します。
例えば販売実績や在庫状況をリアルタイムで把握し、必要に応じて計画を修正したり、仕入れリードタイムを短縮し、需要変動に迅速に対応することにより、機会損失を防ぐことができます。

3.在庫管理の徹底

在庫の入出庫、保管場所、賞味期限などを正確に管理し、在庫の可視化を図ります。
可能であれば、リアルタイムで在庫状況を把握できる在庫管理システムを導入し、在庫管理の効率化・自動化の環境を整備することもできます。
そして需要予測に基づき、適切な在庫量を設定します。もし売れ残りのリスクが高い商品は、少量多頻度で仕入れるなど、柔軟な仕入れ戦略を採用します。

このような策を講じても、過剰在庫になってしまった場合は、在庫処分セールを行ったり、多様な販売チャネルを活用し、在庫処分を促進します。
だからといって廃棄してしまうと、廃棄コストがかかるのでマイナスが上乗せとなります。

アイムライズでは、数年前に賞味期限切迫のおせちを引き取り、こども食堂に寄付したことがあります。そのときは賞味期限がギリギリだったため買い取ることはできなかったのですが、メーカーに寄付の提案をしたところ、快く承認してくださいました。
寄付先のこども食堂では、子供たちはもちろん、保護者にも非常に喜ばれました。

こども食堂

このように、アイムライズでは大切な商品の廃棄を削減し、「もったいない」を「ごちそうさま」に変えるお手伝いを行っております。
季節商品に限らず、納品先からの急な返品や、輸出予定が急なキャンセルを受け行き場を失った商品など、過剰在庫でお困りの場合は、お気軽にアイムライズへご相談ください