最終更新日: 2026/02/19
日本の良さのひとつに「四季」があります。春・夏・秋・冬のそれぞれに色や温度などの特徴があり、それに合わせたイベントもたくさんあります。そのイベントは、昔からの風習やしきたりから伝わっているものから、商人が企てたものが広がったものなど様々です。
そしてイベントの盛り上げ役になるのが「季節商品」です。
お正月にはおせち料理、バレンタインデーにはチョコレート、お花見には花見弁当、そして節分には恵方巻。また、中身は通常品と同じで季節に合わせたパッケージを作るケースもあります。例えば桜の花びらがデザインされたペットボトルラベルや、母の日や父の日に向けて「ありがとう」などのコメント入りのパッケージなど。
このような商品は、時期が過ぎるとお客様が手に取る確率はかなり低くなります。それは「売れ残り感」が出てしまうからです。そのため、季節商品は過剰在庫を発生しやすい商品であり、年中頭を抱えている担当者も多いと思います。
今回は、季節商品が過剰在庫になる要因を探り、近年の「恵方巻」に代表される食品ロスの現状を踏まえた対策と対処方法について紹介します。
1.季節商品の需要変動の激しさ
需要予測の誤りと外的要因への依存
季節商品は、気温、降水量などの天候、祝日やお祭りなどのイベント、そして流行などの外的要因に大きく左右されます。これらの要因は予測が難しく、需要の急激な変動を引き起こす可能性があります。
近年では地球温暖化の影響もあり、「例年通りの気温」が通用しなくなっています。3月中旬に真冬のような寒さに戻りがちだったり、逆に11月まで夏のような暑さが続いたりすることで、ディスプレイしていた季節商品の売れ行きが大きく狂うケースが増えています。
販売期間の短さと「鮮度」の壁

季節商品は、販売期間が限られているため、予測の誤差が売れ残りに直結します。
特に「恵方巻」のようなデイリー食品は、節分当日を過ぎた瞬間に価値がほぼゼロになってしまいます。かつては「欠品を出さないこと」が美徳とされてきましたが、 その裏で発生する大量廃棄が大きな社会問題となりました。
近年でも、予約販売の浸透など対策が進む一方で、依然として数百万本規模の売れ残りが発生しているという推計もあり、SNS等で廃棄現場の写真が拡散され議論を呼ぶなど、依然として深刻な課題であり続けています。
資料:恵方巻き、売れ残りは推計256万本 節分に考える食品ロス問題(毎日新聞)
流行と消費行動の変化
こうした在庫の山や廃棄の問題は、単なる「予測ミス」だけではなく、消費者の価値観や流行の捉え方が変化していることも大きな要因です。
トレンドの移り変わりが早いのはアパレル業界のイメージが強いかもしれませんが、今や食品や飲料の世界でも同様、あるいはそれ以上のスピードで消費者の嗜好が変化しています。例えば「SDGs」や「食品ロス削減」に対する意識が高まっており、以前のように「山積みの商品」を見ても「活気がある」と感じるのではなく、「これ全部売れるの?もったいない」とネガティブに捉える層が増えている点も無視できません。
2.需要予測の難しさと最新の対策
過去データの限界とAIの活用
過去のデータは参考になりますが、パンデミックや不安定な国際情勢、急激な気象変化により、過去の踏襲だけでは不十分です。
現在では、過去の販売データに加えて、気象庁の長期予報やSNS上のトレンドワード AIで解析し、より精緻な需要予測を行う試みが普及しています。
「予約販売」へのシフト
近年の恵方巻販売における最大の変化は「完全予約制」や「早期予約割引」の導入です。農林水産省も食品ロス削減の観点から、小売業者に対して需要に見合った販売を呼びかけています。
あらかじめ需要を確定させることで、製造段階でのロスを最小限に抑える「受注生産型」のモデルが、季節商品のスタンダードになりつつあります。
資料:2026年の恵方巻きロス削減に取り組む事業者の募集を開始!(農林水産省)
ただ、予約販売を実施するとしても、締切日が早すぎると店頭販売数を予測し発注せざるおえません。コンビニエンスストアの場合は、その廃棄分はお店負担となり利益を圧迫します。なかなか厄介な課題です。
3.過剰在庫による影響と在庫調整
季節商品はメーカーにとって、短期間で高い利益を生むチャンスである一方、在庫管理の失敗は経営に直結する大きなリスクを伴います。
製造現場を混乱させる「部門間の連携不足」
製造メーカーにおいて最も警戒すべきは、サプライチェーン全体で需要の変動が増幅される「ブルウィップ効果(鞭の恩恵)」です。 小売現場でのわずかな需要の減速が、卸、そしてメーカーへと伝わる過程で大きく増幅され、工場には「過剰な発注」として届いてしまいます。販売部門が需要の鈍化をいち早く察知しても、製造・仕入部門へのフィードバックが遅れると、工場は古い計画のままフル稼働を続け、行き場のない在庫が山積みになります。
季節商品はスピードが命です。リアルタイムで販売状況を共有し、原材料の調達や製造ラインの稼働を柔軟にストップ・調整できる体制がなければ、過剰な労務費や光熱費をかけて「捨てるためのもの」を作り続けるという、現場の士気にも関わる事態を招きかねません。
利益を食いつぶす「廃棄コスト」と環境負荷
売れ残った季節商品の廃棄は、メーカーにとって「二重の損失」を意味します。
① 製造原価の損失: 原材料費、製造ラインの光熱費、梱包材、人件費。
② 廃棄・処理費用: 産廃業者への委託費、運搬費、そしてこれらに伴う事務的なコスト。
食品の場合、これらに加えて「ダイナミックプライシング」による大幅な値引き販売も、ブランド価値を損なう要因となります。また、SDGsやESG投資が重視される現在、大量廃棄を放置する姿勢は投資家や消費者から「経営管理能力の欠如」とみなされ、社会的信用の失墜という、目に見えるコスト以上のダメージを企業に与えるリスクとなっています。

4. 季節商品の過剰在庫防止策と「もったいない」の活用
多角的なデータ分析と在庫の可視化
地域ごとの詳細な気象データや、リアルタイムの在庫管理システムの導入により、在庫状況を常に「見える化」しておくことが重要です。
多様な販売チャネルの活用
もし過剰在庫が発生してしまった場合でも、すぐに廃棄するのではなく、以下のような手段を検討しましょう。
ダイナミックプライシング
時間帯や在庫数に応じた柔軟な価格変更。例えば、閉店間際のスーパーで見かける「半額シール」のDX版として、AIが売れ行きや天候から廃棄リスクを予測し、最適なタイミングで10%→30%→50%と段階的に割引率を自動調整するシステムが注目されています。また、直接の値引き以外にも、特定の商品に対して「期間限定で付与ポイントを倍増させる(エシカルポイント)」ことで、ブランドの定価を守りつつ消費者の「お得感」を刺激し、売り切る手法も普及し始めています。
フードシェアリングプラットフォームの活用
消費期限が近い商品をユーザーとマッチングするアプリ以外に、賞味期限切れ間近の「訳あり品」を専門に扱うWebサイトや、LINEを通じて近隣住民に直接在庫処分情報を通知する自治体・店舗の仕組みなど、多様な窓口が存在します。これらを利用することで、通常の販売ルートに乗らなくなった商品を必要とする消費者へ効率的に届けることが可能です。
寄付(フードバンク)
こうした社会的な取り組みは、一企業の努力だけで完結するものではありません。私たちアイムライズも、微力ながら社会の一員として「価値ある商品を捨てたくない」という現場の想いに寄り添う活動を大切にしています。その一環として、弊社でも過去に、賞味期限切迫のおせちを引き取り、こども食堂に寄付した実績があります。

持続可能な「季節行事」を目指して
季節商品は売上の大きな柱ですが、一歩間違えれば大量の過剰在庫を生んでしまうリスクを抱えています。
「余ったら捨てる」という時代は終わり、現在は「需要を正確に予測し、余らせない。もし余っても次へ繋げる」という姿勢が企業に求められています。
実は弊社(アイムライズ)も、この食品ロス問題の最前線を知るべく、毎年行っている井出留美さんの「恵方巻の売れ残り実態調査」にスタッフ全員で参加いたしました。
井出留美さんは食品ロス問題の専門家で、日本の食品ロスの課題にて問題提起を発信しつづけ、食品ロス削減の推進に多大なる貢献を続けていらっしゃる方で、常に私たちに大きな気づきを与えてくれる存在です。
今回の井出さんの調査記事については、以下の媒体に掲載されております。
是非ご一読ください。
【調査協力・参考記事】
1)Yahoo!ニュース
恵方巻2026、全国の大手コンビニ373店舗で調査 毎日の売れ残り食品は億単位の税金も投じて焼却処分
2)朝日新聞SDGs ACTION!
コンビニ恵方巻き商戦、2026年は完売店が倍増 井出留美の「食品ロスの処方箋」【53】
3)ニュースレター 井出留美の「パル通信」
速報:恵方巻の売れ残り調査2019-2026年の8年間でどう変わったか
過剰在庫を減らすことは、コスト削減だけでなく、地球環境を守り、企業の信頼を高めることにも繋がります。こうした季節行事は日本が誇る大切な文化です。
アイムライズでは、この素晴らしい文化を未来へ上手に継続していけるよう、大切な商品の廃棄を削減し、「もったいない」を「ごちそうさま」や「ありがとう」に変えるお手伝いを行っております。季節商品に限らず、急な返品やキャンセルなどで在庫管理にお困りの場合は、ぜひお気軽にアイムライズにご相談ください。
