外国にも賞味期限ってあるの?日本と外国の賞味期限・消費期限事情を解説

最終更新日: 2025/04/25


先日、開催前からいろいろ話題に上がっている大阪・関西万博が始まりました。今回は150カ国が参加しているそうです。公式サイトを見ると、食に関してもいろいろ体験できそうで、セルビア料理やハンガリー料理、またスイスの郷土料理を提供するレストランもあるそうです。

ところで、日本では当たり前のように食品に表示されている「賞味期限」や「消費期限」ですが、外国にもあるのでしょうか?
今回は、日本と外国の賞味期限・消費期限の事情について、身近なお菓子の例も盛り込んで分かりやすく解説します。

1. 定義と概念

日本における賞味期限とは「おいしく食べられる期限」を示します。品質が比較的安定している食品に表示され、この期限を過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではありません。
また日本における消費期限とは「安全に食べられる期限」を示します。品質が急速に劣化しやすい食品に表示され、この期限を過ぎたものは食べない方が良いとされています。

一方、外国では国や地域によって定義は異なりますが、一般的に以下のようになっています。
Best Before/Best By (賞味期限に相当)が記載されている場合は、品質が保たれる、または最も良い状態である期限を示します。期限を過ぎても必ずしも食べられないわけではありません。
Use By/Expiration Date (消費期限に相当) が記載されている場合は、安全に食べられる期限を示します。微生物学的に腐敗しやすく、期限を過ぎると健康を害する可能性がある食品に表示されます。ただし、消費期限の考え方が日本ほど厳格ではない国もあります。

2. 表示方法

日本では 一般的に「年月日」の順で表示されます。製造日から3ヶ月を超えるものは「年月」表示も可能です。
表示方法が2種類あるのは、製造日から3ヶ月以内の食品: 消費期限または賞味期限が「年月日」で表示されます。これは、比較的品質が変化しやすい食品や、期限が短い食品に対して、より正確な情報を提供するためです。
製造日から3ヶ月を超える食品: 賞味期限が「年月」で表示されることがあります。これは、品質が比較的安定しており、日単位での品質変化が少ないと考えられる食品に対して、より簡略化された表示方法が認められているためです。
飴、ガム、一部のチョコレートやスナック菓子の賞味期限は、「年月」表記があります。

一方、外国では「年月日」での表示が多く、アメリカは「月/日/年」、イギリスは「日/月/年」の順が多いです。
しかしクッキー、ビスケット、クラッカーなど、水分が少なく比較的日持ちする焼き菓子や、ポテトチップス、プレッツェルなどのスナック菓子は、日本と同様に年月表示が多い傾向があります。
また国によって様々な表示方法があり、月の略語(例: JAN、 FEB)や年の下2桁表示なども見られます。

3. 期限の長さ

水分の多いお菓子(生菓子、一部の焼き菓子など)は、日本・外国問わず賞味期限が短くなる傾向があります。
乾燥したお菓子(クッキー、スナック菓子、飴など)は、比較的長く保存できるため、賞味期限も長めに設定されることが多いです。
特に外国では、日本よりも賞味期限が長く設定されている食品が多い傾向があります。それにはいくつかの理由が複合的に絡み合っています。

輸送距離と時間

日本は、 国土が比較的狭く物流網が発達しているため、製造から消費までの時間が短く済むことが多いです。そのため、それほど長い賞味期限を設定する必要がないのです。
しかし外国においては国土が広大であったり、複数の国をまたいで流通したりすることが多いため、製造工場から消費者の手に届くまでに長い時間と距離がかかります。そのため、ある程度の保存期間がないと、店頭に並ぶ前に期限切れになってしまう、ということもなりかねないのです。

例えば、近所のケーキ屋さんが、今日焼いたクッキーを想像してください。新鮮でバターや小麦の風味が豊かです。
ただし、保存料は少なめか、もしかしたら入っていないかもしれません。
そのため、美味しく食べられる期限(賞味期限)は、1週間程度と短いことが多いです。商品によっては「今日中がおいしいですよ」と言われるかもしれません。

一方、ヨーロッパなど外国で作られたクッキーを想像してください。
船で何週間もかけて運ばれてきます。税関を通ったり、倉庫に保管されたりする時間もかかります。
そのため、品質を保つために、ある程度の保存料が使われているかもしれません。包装も、湿気や酸化を防ぐために工夫されているでしょう。
その結果、美味しく食べられる期限(賞味期限)は、数ヶ月、場合によっては1年など、とても長くなるのです。

保存技術と包装技術

日本の包装技術は高いですが、比較的短い期間での消費を前提としているため、そこまで厳重な包装がされていない場合もあります。
しかし外国のお菓子は、長い輸送期間に耐えられるよう、高度な保存技術や包装技術が用いられている場合があります。例えば、脱酸素剤の使用、真空に近い状態での包装、特殊なフィルムの使用などを使用することもあります。

食品に対する考え方と消費者の嗜好

日本の消費者は、より新鮮で品質の高いものを好む傾向が強く、短い賞味期限の商品でも抵抗なく購入することが多いです。生物を食する文化が定着している国の特徴なのでしょう。

しかしアメリカでは国土が広く、まとめ買いの習慣も根強いため、ある程度の保存期間がある食品が好まれる傾向があります。
またヨーロッパでは、複数の国が陸続きでつながっており、国境を越えた食品の流通が盛んです。そのため、ある程度の輸送期間を考慮した賞味期限が設定されることが多いです。

4. 賞味期限表示のルールと基準

日本の食品の賞味期限は、食品表示法という法律に基づいて、非常に厳格に定められています。

日本のルール

日本では、賞味期限を設定するために「なぜその期限なのか」という科学的な根拠を示す必要があります。例えば、どれくらいの期間なら安全に美味しく食べられるのかを、検査や実験を通して証明しなければなりません。
また賞味期限の表示方法も細かく決まっており、年月日を省略することは基本的にできません(先にも述べた通り、飴やスナック菓子のような、製造から3ヶ月を超えても品質変化が少ない商品は、年月表示が可能な場合があります)。

では、なぜ日本では賞味期限が短くなりがちなのでしょうか。
それは、このルールが厳格なために、日本では製造業者が賞味期限を慎重に、短めに設定する傾向があります。少しでも期限を過ぎて品質が落ちる可能性を考慮して、安全を見越した期間にするためです。

一方外国ではどのようになっているのでしょう。

外国のルール

外国の賞味期限に関するルールは、国や地域によって大きく異なります。一般的に、日本ほど厳格な基準がない場合が多く、以下のような特徴が見られます。

●基準の幅広さ

賞味期限の設定に求められる科学的な根拠のレベルが、日本ほど高くない場合があります。製造業者が、過去の経験や一般的な品質データを元に、ある程度の余裕をもって期限を設定することが認められる国もあります。

●表示の柔軟性

賞味期限の表示方法も、日本ほど詳細に定められていない場合があります。年月日だけでなく、月と年だけの表示や、「Best Before End」(この月の末日まで)といった表現が認められる国もあります。

●消費者の自己責任

賞味期限を過ぎた食品の取り扱いについて、消費者の自己責任に委ねられる部分が大きい場合があります。もちろん、食中毒などの健康被害を防ぐための基本的なルールはありますが、「少しくらい過ぎても食べられる」という考え方が、日本に比べて寛容な場合もあります。

しかし近年では、EU諸国やアメリカなどでも、食品ロス削減の観点から、賞味期限の表示が見直される流れがでてきました。
食品の国際的な取引が活発になる中で、国ごとに異なる賞味期限の表示や基準があると、輸出入の際に混乱が生じたり、食品ロスにつながったりする可能性があるため、国際機関(例えば、WHOやFAOなど)が中心となって、賞味期限や消費期限の表示に関する共通の基準を作ることが検討されています。
これにより、消費者が海外の食品を購入する際にも、より分かりやすく、安心して商品を選べるようになることが期待されています。

以上のことから、今後の賞味期限表記は変化されることが考えられます。

1. 国際的な基準の調和の加速

グローバル化が進み、食品の国際的な取引がますます活発になる中で、国際機関が中心となり、各国が協力して、より統一された賞味期限表記の基準を設ける動きが加速していくことが期待されています。

2. 食品ロス削減に向けた表示の見直し

世界的に食品ロスが深刻な問題となる中で、賞味期限表示が食品ロスの一因となっているという指摘があります。
また日本特有の商慣習である「3分の1ルール」は、まだ食べられる食品が大量に廃棄される原因の一つと指摘されています。

今後は、「賞味期限」と「消費期限」の区分をより明確にし、消費者が誤解しないような表示方法が求められるようになるでしょう。
そして、賞味期限の表示を「おいしく食べられる目安」として、期限を過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではないという情報提供を積極的に行うことで、食品ロスの削減につなげる取り組みが進むと考えられます。
さらに「3分の1ルール」が「2分の1ルール」に変更するという見直しも進められています。これは「メーカーや卸業者から小売店への納品期限を、賞味期限の2分の1までにしましょう」という基準にする、という流れです。

まだ導入途上ですが、政府や業界団体では食品ロス削減に向けた取り組みを進めており、また納品期限緩和の効果を検証する実証実験を行ったり、見直しを促すガイドラインも検討されています。一部の小売店では、すでに「2分の1ルール」を取り入れ、食品ロス削減に向けた取り組みが積極的に進められており、徐々に拡大しつつあるのが現状です。

3. 消費者の理解を深めるための情報提供の充実

賞味期限表示に関する消費者の理解が不十分な場合、必要以上に食品を廃棄してしまう可能性があります。今後は、賞味期限の意味や、期限を過ぎた食品の取り扱い方などについて、消費者への情報提供をさらに充実させていくことが重要になるでしょう。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

  • ○ 賞味期限に関するわかりやすい解説動画やパンフレットの作成
  • ○ 小売店での賞味期限に関するPOP広告の掲示
  • ○ 食品メーカーによる、自社製品の賞味期限に関する情報発信

4. テクノロジーを活用した新たな表示方法の導入

将来的には、現在の年月日表示だけでなく、テクノロジーを活用した新たな表示方法が導入されるかもしれません。
例えば、以下のようなものが考えられます。

  • ○ 食品の鮮度をリアルタイムで計測し、その情報をスマートフォンなどで確認できる仕組み
  • ○ QRコードなどを活用して、商品の製造日、流通経路、保存状況などの詳細な情報を提供する仕組み
  • ○ 個々の消費者の食生活や好みに合わせて、最適な賞味期限を表示する仕組み

ワールドワイドな意識とルールの変革、そしてテクノロジーの進化によって、食品ロス削減が進み、またお客様も混乱することなく、今まで以上に安心して食品を購入できる未来になりそうです。しかし賞味期限の記載は続いていきます。もし賞味期限が切迫してしまい、行場を失ってしまった食品や飲料などの在庫でお困りのメーカー様・小売店様は、一日でも早くアイムライズにご相談ください。そして大切な商品を少しでも消費者にお届けし、廃棄コストと食品ロスの削減を目指しましょう。