食品ロスが大きな社会問題になっています。とりわけ事業系食品ロスが社会に与える影響は大きく、日本国内における施策のポイントとしても注目を集めています。そのため、各企業は適正在庫への調整に十分配慮していることでしょう。
しかし、得意先との関係上、食品の過剰在庫を劇的に改善するのはままならないこともあるものです。また、運搬途中に起きたアクシデントで商品に凹みが発生し、通常ルートでの販売が難しくなることもあるかもしれません。そんな企業の在庫問題の解決策としておすすめなのが、買取の利用です。
今回は、事業系食品ロスの実態や買取事情などについて解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。
事業系食品ロスで起こる問題
事業系食品ロスは、さまざまな問題を引き起こしています。
まず挙げられるのが、企業内の資産を無駄にすることで経営をひっ迫する点です。過剰在庫や不良在庫を廃棄した分だけ利益ダウンにつながり、さらに廃棄コストがかかるデメリットも存在します。
社会全体にかかる問題としては、ゴミの焼却時にCO2を排出することで地球温暖化につながることが挙げられます。国の施策として、2000年から2030年の間にCO2排出量を半減させる目標を掲げているのは周知の通りです。この施策は事業者だけでなく、各家庭も対象ですが、食品関連事業者は社会に与える影響が大きいことから、特に適切な食品リサイクルを求められています。過剰な食品ロスを発生させた場合には、食品リサイクル法による罰則や、SDGsに反したとして企業イメージのダウンにつながる恐れも否定できません。
データで見る食品ロスの実態
食品ロスの実態について、省庁などが発表しているデータをもとに確認してみましょう。ここでは、次のデータをチェックしていきます。
・1年間あたりの食品ロス量
・食品廃棄時に排出するCO2量
・ゴミの廃棄にかかる費用
・食品ロスで発生する損失
なお、これから紹介するデータは実測値ベースのものだけでなく、推測値や概算によるものを含みます。あくまで参考値としてとらえてください。
1年間あたりの食品ロス量
まずは、1年間に発生している食品ロスの分量について紹介します。
農林水産省が発表した令和3年度のデータによると、事業系で年間およそ279万トン、家庭系まで合わせるとおよそ523万トンもの食品ロスが日本国内で発生しているといわれています。これは、国民一人が毎日114グラムのおにぎり1個を捨てているのと同じ計算です。
また食品ロスには、いわゆる隠れ食品ロスについての問題もあります。見栄えが悪く規格外で捨てられる野菜や、食品加工時に廃棄される食材の問題です。これらを合わせると、事業系では年間およそ1,670万トン、家庭系まで含めるとトータル2,402万トンの食品廃棄が発生しています。
出典:農林水産省「特集『食品ロスって何が問題なの?』」、消費者庁「食品ロス削減関係参考資料(令和5年6月9日版)分割版2」
食品廃棄時に排出するCO2量
次に、食品廃棄時に排出するCO2量について紹介します。
環境省の発表によると、食品ロスに係るCO2排出原単位は、食品1トンあたり0.46トンとされます。これを先ほど説明した事業系食品ロス279万トン(家庭系合わせると523万トン)に当てはめると、あくまで単純計算ですが128.34トン(全体では240.58トン)のCO2が排出されていることになります。
出典:環境省「地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)」
ゴミの廃棄にかかる費用
ここからは、ゴミの廃棄にかかる費用について見ていきましょう。前提条件として、これから紹介するデータは産業廃棄物ではなく、あくまでも市町村及び特別地方公共団体が一般廃棄物の処理に要する経費です。
令和3年のゴミ処理事業経費総額は、日本全国でおよそ2兆1,449億円(国民一人あたりの換算でおよそ17,000円)でした。一方、ゴミ総排出量は4,095万3千トンです。
これを、国内全体の食品ロス523万トンに当てはめて単純計算すると、2兆1,449億円÷4,095万3千トン×523万トン=2,739億円と算出されます。事業系食品ロス279万トンで単純計算した場合、1,461億円の処理費用になる計算です。
事業ゴミの場合、実際にはゴミの種類や処理業者によって費用がまちまちなため、これはあくまでも参考値です。しかし、廃棄するだけでも多額のコストがかかることは想像に難くないでしょう。
出典:環境省「日本の廃棄物処理 令和3年度版」
食品ロスで発生する損失
最後に、食品ロスで発生する損失額を紹介します。
事業系食品ロスによる損失推計額は、およそ3兆6,500億円といわれています。家庭系の食品ロスを含めた国内全体だと、6兆7,500億円もの損失が発生している計算になるそうです。
これほど多額な損失が発生していることからも、事業系・家庭系含めた食品ロスの改善は重要といえるでしょう。
出典:農畜産業振興機構「食品ロスの伝道師として」
事業系食品ロスが起こる要因
事業系食品ロスが起こる代表的な要因としては、次のものが考えられます。
<事業系食品ロスの代表的な発生要因の例>
・賞味期限の切迫
・急な返品や受注キャンセル
・商品リニューアルにともなう旧製品の処分
・社会情勢の変化
・パッケージの破損
・生産計画の狂いによる余剰在庫
・過剰生産や誤発注などの人為的ミス
特に賞味期限は、事業系食品ロスが起こる大きな要因です。1/3ルールや1/2ルールなどの商慣習により、食品には販売可能な期限が設けられています。実施には賞味期限まで十分な余裕があるにもかかわらず通常ルートでは販売できないのです。近年見直される傾向もあるものの、賞味期間はまだまだ事業系食品ロスに直結しやすくなっています。
取引先からの急な返品やキャンセルがあった際にも、この賞味期限の問題がネックとなり、不良在庫となりやすい問題があります。その他、商品リニューアル時の旧製品も、通常ルートでの販売が難しく不良在庫化するようです。
このように、事業系食品ロスはさまざまな要因で起こります。単純な人為的ミスならともかく、得意先側の事情や社会情勢の変化など外的要因によって起こる過剰在庫はコントロールが難しいものです。事前に予防策を取るのが難しいこのようなケースにこそ有効なのが、買取の利用といえます。
事業系食品の過剰在庫を買取に出すメリット
事業系食品の過剰在庫を買取に出す際、企業に得られるおもなメリットは次の通りです。
<事業系食品ロスを買取に出すおもなメリット>
・商品をスムーズに現金化できる
・コストを削減できる
・企業イメージのアップにつながる
まず、商品をスムーズに現金化でき、自社の収益につなげられるのが買取利用の大きなメリットです。通常の販路に乗せられなくなった食品でも、買取業者独自の販売ルートを利用することで活路を見いだせます。販売時に余分な手間がかかりにくい利点もあります。
また、商品を買い取ってもらえば、管理や廃棄にかかるコストを削減可能です。さらに、販売方法次第では企業イメージのアップにもつなげられます。SDGs推進事業者としてアピールすることで、自社ブランドのファン獲得や宣伝活動に活かせるのも買取利用の魅力です。
買取可能な事業系食品の例
買取可能な事業系食品の例としては、次のものが挙げられます。
<買取可能な事業系食品のジャンル例>
・レトルト食品
・即席麵
・缶詰
・冷凍食品
・アルコール飲料
・清涼飲料水
・菓子類
・調味料
・健康食品
また以下の食品についても、条件次第では買取可能です。
<こんな食品も買取可能>
・賞味期限まで切迫した食品
・規格外の商品
・リニューアルにともなう旧パッケージの商品
・季節商品
・外装破損で商品自体の品質に問題が無い商品
このように、業務用食品を含めた幅広いジャンルのさまざまな食品が買取対象となります。条件次第では、賞味期限が迫った食品や、場合によっては賞味期限が切れた食品でも買取している業者もあります。しかし、買取業者によって取扱可能な食品や得意な分野が異なるため、自社のケースに合った買取業者を探しましょう。
買取が難しい事業系食品の例
一方で、買取が難しい事業系食品の例としては、次のものが挙げられます。
<買取が難しい事業系食品の例>
・賞味期限から過剰に時間が経った食品
・汚損の激しい食品
・開封済の商品
・保管状態が不適切な食品
・いったん産廃扱いになった食品
賞味期限が切れた商品でも、条件次第では買取対応している業者があるのは前述の通りです。しかし、大きく賞味期限が切れた食品は販路が確立できず、買取が難しいのが現状です。
また、軽い凹み程度のB級品なら買取の対象となりますが、汚損が激しい食品や開封済みの食品は買取できません。長期間直射日光にさらされていたり、カビが発生していたりする不適切な保管状態の食品も同様です。
いったん廃棄物として手放した商品の再利用についても、品質上の問題や契約上のトラブル防止の観点から対応していない業者が大多数なようです。
事業系食品の買取の流れ
事業系食品の場合、次のような流れで買取を行うのが一般的です。
<一般的な事業系食品の買取の流れ>
・メール・電話・FAXなどを通じ、買取業者への問い合わせや査定依頼を行う
・商品、数量、保管状態といった詳細情報を買取業者に伝える
・買取業者が商品の査定を行う
・査定の結果やその他条件に納得がいったら、商品の売買契約をかわす
・商品を納入する
一般的な買取方法は以下の通りです。
<一般的な買取方法>
・買取業者への持ち込み依頼
・買取業者側からの出張買取
・運送業者を利用した納入
ただし、上記はあくまで一般的な買取の流れや手段です。買取業者によって異なる点には注意しましょう。
事業系食品在庫を買取に出す際の注意点
事業系食品在庫を買取に出す際には、以下の点に注意を払うとスムーズに取引可能です。
<事業系食品在庫を買取に出す際に注意すべき点>
・ロット数に関わらず買取対応している業者を探す
・迅速な取引に配慮している買取業者をチェックする
・販売時に公開・非公開が選べるか確認しておく
・プロモーションや寄付なども視野に入れてみる
・買取業者に対し商品の情報を詳細に伝えておく
まずは、ロット数に関わらず買取対応しており、かつ迅速な取引に配慮している買取業者を探しましょう。食品には賞味期限の問題があります。大量・少量関わらず在庫を一度に取り扱える業者の方が取引がスムーズで、余分な手間もかかりにくくなります。
また、販売時に企業名の公開・非公開が選べると、PRに役立つのはもちろん、ブランドイメージの毀損が避けられ、取引先とのトラブル防止にも役立ちます。さらに、プロモーションや寄付などの提案にも対応している業者であれば、万が一条件が折り合わず買取に至らなかったケースでも、自社の資源を有効活用しやすくなります。
買取業者に提出する商品情報は、できる限り詳細に伝えておくことも大切です。情報が正確でないと、途中で取引の継続が難しくなります。タイムロスが発生するばかりでなく、信用問題にもつながりかねません。特に、外装の凹みや印字エラーなどがあるB級品の場合には、詳細な画像を含む、情報を添えるなどの工夫をし、正確な情報を伝えましょう。
まとめ
今回は、事業系食品ロスの実態や買取事情について解説しました。大きな社会問題となっている食品ロスの中でも、とりわけ事業系食品ロスの解決には、買取を活用するのがおすすめです。ぜひ自社に合った買取業者を探してみてください。
アイムライズでは、法人様を対象とした食品在庫の買取に積極的に取り組んでいます。自社の資産を活かしたい・SDGsへ貢献したいというご担当者様の心情に寄り添った提案を心がけているので、ぜひご相談ください。